わが国では、2003年に山陽新幹線で居眠り運転が起こり、後にその運転士が重度のOSASと判明したことが契機となっております。睡眠時無呼吸症候群に対してCPAP(Continuous Positive Airway Pressure,持続陽圧呼吸)と呼ばれる機器を用いた治療法をはじめ、その他の治療法の有効性も明らかになりました。SASに特有な症状や合併症は、無呼吸によって引き起こされる2つの重要な病態に起因すると言われております。1つは無呼吸のたびに患者本人はほとんど気づかない目覚め(=脳波上の覚醒)が起こり、良質な睡眠を得ることができず日中の眠気を引き起こすこと、もう1つは無呼吸の間は肺での酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が止まるため、血液の中の酸素不足や二酸化炭素の貯留が繰り返され、これがさまざまな臓器に対し悪影響を及ぼすことです。これらがSASの根幹となる病態となり、SASは無呼吸の出現頻度が多くなるほど、または無呼吸の持続する時間が延びるほど重症となります。